ロッキンf MIcro Guitar Synthの VCFについて



ロッキン f 別冊より(VCF部分)

上図にロッキンfに掲載された MIcro Guitar SynthのVCF部分を示します。 記憶がさだかではないのですがこの製作記事は月刊誌ロッキンfの DIY effectorコーナーの記事ではなく別冊で初めて掲載された記事だったように思います。

*: と思ったら1981/03にギター・シンセサイザーの製作という記事があるようで、これが この記事かもです。 ちなみに設計者は堤光生氏でguitar関係のEffector/AMP製作では有名な方です。

記事の中では KORG 700の diode ring VCFをヒントにして発想した単電源で動くVCFということでした。 当時は diode ring VCFの回路も知らず上記のこの回路動作もよく理解はしていなかったのですが、今見てみると記事にも載っていたようにこれは 700と同様な sallen&keyの正帰還型の filterでVCRとして diodeの微分抵抗を使ったVCFではありますが diode ringとは同じ回路というわけではなく制御信号の直流変動キャンセルの為の対称回路(さらには逆相反転MIXの効果)およびその駆動原理を参照したということがわかります。

diodeに流すbias電流の駆動回路を差動回路を用いることによりdiode ringに比べてこの部分が簡略化されているわけです。 一見ladderVCF回路や 差動回路を用いたVCAのようにも見えますが根本的な違いはCVとしての電流源にあたる部分は固定で CVは左側のベースすなわち差動回路であればAudio信号が印加される部分に印加されています。 さらにaudio信号は両Tr.のコレクタ側に入力する形になっています。 VCAやlader VCFの差動回路の作法からするとなんでコレクタ側に信号が入るのか?となってしまいますが、この場合の差動回路は単にdiodeをドライブするための対称回路なので不思議ではないわけです。

diode ringと同様、各Tr.のコレクタにつながっているdiodeの先には Cap.がつきますがその後の diodeにつながる Cap.は両信号が MIXされているので1個でいいわけです。 上記のVCFを回路を動作がわかりやすいように(わかりにくく?)書きなおした回路を以下に示します。



書き直した回路

これはどこかで見た回路にそっくりです。 スタイナーの VCFに酷似しているというか それの単電源versionといったところです。 偶然同じ回路を考案したのだとしたら面白いできごとです、 回路図の描き方で同様の回路でもよく見ないと違って見えてしまうというか両者の共通点をいままで認識していませんでしたので面白い発見でした。 たまたまdiode ringの項を見直していた時、"700のVCFを参考にした "というフレーズを思い出してロッキンfの別冊を見たのがきっかけです。 CVの制御回路が簡単という部分が最大の特徴なのかも知れません。



I/O誌の記事(1976/12)より(近年とみに有名になったスタイナーのVCF)

steinerやこのロッキンf VCFと diode ring VCFは多少構造はちがいますがにたような発想のVCFだということがわかりました。 以下に示す VCA回路と共々 CVの差動driveがポイントかと思われます。 いっそのことdiode ringの core部分とこの差動drive回路を組み合わせればより簡易な VCFができそうな気もします。



steiner parkerの回路といえば VCAもVCFと同様に diodeの微分抵抗を利用したVCR回路を使っておりCVのdrive回路もVCFと同様ですがVCAの方が原理がわかり易いかも知れません。


スタイナーのVCA回路

VCFと同様、差動回路のコレクタ間に配置されたdiodeの中点の電位はCV変動でも基本変化しません。 (定電流化されていないので両Icの変化には差が出ますので少し変動するでしょうがこれでもOKということなのでしょうか。) VCAとしての動作は若干わかりにくいですが上のQ3のNPN Tr.のエミッタ抵抗を diodeの微分抵抗に置き換えて NPN Tr.の Gmを可変する構造になっています。

 Gain = - Rc/Re を基本として ReをVCRとする回路。

実はこの回路をお手本にしたような VCA回路が電子展望の1976年3月号の VCA回路です。 単純にはエミッタフォロワがOP AMPのbufferに置き換わった形です。 Q4によるbias回路も同じ構造。 1976年当時は自分としては回路に対する理解力がなかったのでよく動作がわかりませんでした。 電子展望の本文中には " この回路は75年10月号のCQ誌の技術展望に紹介されているものを元にしている " と書いてあります。 はたしてその回路はどんなものか75年の CQ誌を見てみたいと思いました。  ちなみにSTEINER PARKER Synthaconは1975年には発売されていました。 Tr.のエミッタ抵抗を diodeの微分抵抗を利用してGm可変のVCAを作る例はトラ技の2001年4月号の特集にも載っていました。


電子展望のVCA回路


上記のSTEINER VCF回路は Electronic Design誌の1974年12月号に掲載された回路であり、SynthaconのVCFとはresonance の pot位置を除いては同じ回路です。 またこのVCF回路については " A SUPER SIMPLE THREE-MODE NEOS INPUT, VARIABLE RESONANCE VOLTAGE CONTROLLED FILTER FOR SIGNAL PROCESSING " というタイトルの Nyle Steiner氏自身による解説文献も Netで見つけることができます。 その中で面白い例が載っていてこの filterは 3modeの各入力が独立しているため3入力に対して同時に信号を入力することが可能という過激な例が書かれています。

なぜか似たような回路の元ネタ話になってしまいましたが、現在のnet状況とは異なり1975年当時ではごく一部の人のみがこのような回路情報を得ることができた時代だったのを実感できることがらだとも思います。 STEINER VCFはたまたま自分は1976年のI/Oの記事を持っていてそれを1997年ごろ以前にやっていたWeb Pageに載せていましたがこのころはMOOGのような有名VCFではなかったように思います。 2000年ごろを境に海外の DIYerの間でSTEINER VCFの話題が出てそこで初めてI/Oの記事のVCFはSTEINER VCFであることがわかりました。

電波科学1974年のsynth記事の項目の中にこの micro guitar synthesizerの VCFの項目を diode ring VCFとの関係で書きましたが、奇しくも元ネタ的な STEINER VCF回路の雑誌掲載が電波科学と同じ1974年だったのは驚き。 というかこの時点では海外の方がはるかに analog synt回路h関連の情報は豊富だったということを物語っている事例かとも思います。 (その点については現在でも変わっていませんが。)



<2018/04/15 rev 0.2>
<2018/04/08 rev 0.1>